読売新聞の「編集手帳」とは朝刊一面の下の方に毎日休まず掲載されている編集後記みたいなものです。朝日新聞でいえば「天声人語」に該当します。知名度からいえば、大学入試でもよく出題される天声人語のほうが断然有名かと思われます。
ただ、今日の編集手帳は文章の構成に凝っており、内容的にも「なるほど」と思わせるものになっていました。全文、転載いたします。
>カリフォルニアの高校生マーティが、親友の科学者ドクが発明した自動車型のタイムマシン「デロリアン」で冒険を繰り広げるSF映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のシリーズ第3作に、印象的なシーンがある◆1985年から30年前にタイムトラベルしたマーティは、55年のドクにデロリアンの修理を頼む。小さな電子部品を見てドクは言う。「故障するわけさ。メード・イン・ジャパンだ」◆マーティはすぐに切り返す。「何を言ってんだドク? 日本製が最高なんだぜ」。55年には粗悪品の代名詞だった日本製の評価は、85年までの30年間で劇的に変わった。さらに30年後の2015年も「最高」と言ってもらえるだろうか◆初回作でマーティはあこがれのトヨタ車を85年の街で見かけ、「ザッツ・ホット(いかしてる)」とほめた。そのトヨタも前年度の営業利益2兆円超から一転して今年度は赤字という◆海外で「クール(かっこいい)」と評判の日本製品は多い。でも、油断はできない。お気に入りをほめる言葉の“温度”が下がったように、世界の景気も冷え込みがきつくなってきたのだから。(2009年1月26日 読売新聞)

*写真はヤフーフォトギャラリーより借用(ヤフーフォトギャラリーへは写真をクリックすればリンクします)
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「ホット」と「クール」というアメリカの若者がよく使う言葉の変遷を通じて、時代の変遷を書いた文章です。「ホット」と「クール」という“温度”の変化という点に注目し、最後はここ数ヶ月の「世界の景気も冷え込み」につなげて〆ています。
例えとこの“温度”の変化という着眼点はなかなかのものですが、「でも、油断はできない」という文章がおかしい気がします。
限られた文字数の中で伝えたいことを過不足なく伝え、しかも興味を持って読んでもうためにかなり苦労して文章をまとめています。しかし、この「でも、油断はできない」という表現(これが筆者の言いたい主観的な結論になってしまっている)がどうにももったいない文章になってしまっています。
デロリアンとトヨタという具体例を車という共通点で結んでいるようですが、これはこれで最初に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の例をもってきた意味はわかります。
でも、誰も油断はしていないと思います。今回のトヨタ売り上げと利益を減らす主たる要因は、アメリカの金融不安に起因する自動車不況と円高によるものです。トヨタの技術力が落ちて売れなくなったわけではないのです。トヨタ関係者の誰もが油断はしていない気がします。
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